歯を失った部位の治療法として、ブリッジや義歯(入れ歯)に次ぐ第3の選択肢として、インプラント治療を希望される方が増えてきました。当初は奥歯への治療において希望される方が多かったのですが、近年は前歯部などの人から見える部分へもインプラント治療を希望される方が増えています。この理由には、最近の新型コロナウイルスの流行により、マスクを常時装着するようになったことがあげられます。治療を受けていても隠すことができるからです。
インプラント治療はチタンなど生体と親和性のある素材でできた人工歯根をあごの骨の中に埋め込み、骨と人工歯根とが直接結合した後に被せ物、ブリッジ、義歯を入れる治療法です。インプラントには1回で被せ物の土台まで入れる1回法と、歯根部分の骨との融合を待ってから土台部分を装着する2回法とがあり、それぞれにメリット・デメリットがあります。
今回はその中でも、比較的安全性が高いと言われているインプラント2回法治療(二次オペ)のメリット・デメリットについてみていきます。
インプラントの1回法と2回法
インプラントは、歯根の部分にあたるフィクスチャー、被せ物の土台になるアバットメント、そして歯冠部分である被せ物の3つのパーツからなります。
1回法
まず、1回法では外科手術を1回だけ行います。 歯茎を切開もしくは小さな穴を開け、専用のキットを使ってドリリングを行い、インプラントを埋入します。このときのインプラントは、フィクチャーとアバットメントとが一体化したものを使用します。アバットメントは、一部が歯茎の上に出た状態にします。この状態であごの骨とフィクスチャー部分とが結合する期間を待って、被せ物をアバットメントに装着して終了します。
1回法は歯肉の切開が一度だけ(手術が1回だけ)なので、患者さんへの身体的負担が減らせます。ただし、インプラントを埋め込むあごの骨がしっかりとあることが条件です。骨の高さや幅が少ない場合に行う骨移植や骨造成は、術後感染のリスクがあるので、避けることが多いです。
2回法
2回法は、手術が2回になります。1回目では、歯茎を切開もしくは小さな穴を開け、専用のキットを使ってドリリングを行いインプラントを埋入するところまでは同じですが、このときのインプラントは、フィクチャーだけを埋入します。あごの骨とフィクスチャー部分とが結合する期間を待って再度歯肉を切開し、フィクスチャーにアバットメントを装着します。その後、被せ物を装着していきます。
2回法のメリット・デメリット
メリット
2回法のメリットは、1回目の手術でインプラントを入れて歯肉を縫合し、インプラントと骨がしっかりと癒合するまで期間を待つため、インプラントが脱落するリスクを減らせます。骨を作る処置も合わせて行うことができるため、インプラント治療のほとんどのケースで適用できます。2回目の手術では歯肉を切開して被せ物の土台を入れる処置を行いますが、この時にインプラント周囲の歯肉の形を理想的な形態にすることも可能です。高い審美性が要求される前歯のインプラントにおいては2回法で行うことが多いです。
デメリット
2回法のデメリットは、外科手術が2回必要となることです。2回目は1回目の手術のような骨のドリリングなどはありませんが、1回法よりも患者さんへの精神的、身体的負担が大きくなります。また、治療期間も1回法に比べて長くなってしまいます。ただ、その後の人生を考えた時、より確実性の高い治療法を取るのか、早く完了する治療法を取るのか、という視点でも検討するべき内容かと思います。
まとめ
今回はインプラントの1回法、2回法についてそれぞれ説明しました。特に2回法は手術が2回にはなりますが、フィクスチャーをしっかり骨融合させることができ、骨造成など様々な難症例へも対応できるというメリットがあります。今後インプラント治療を考えておられる方は、担当医とよく事前に相談し、自分にあった治療法をよく検討、納得してから治療に進むことをお勧めいたします。