鏡を見たときに、「以前より歯が長くなった気がする」「歯と歯の間のすき間が目立つようになった」と感じることはありませんか。冷たい飲み物を口にしたとき、歯の根元がしみるようになったという人もいるでしょう。
こうした変化は、歯ぐきが下がって歯の根元が露出する「歯肉退縮(しにくたいしゅく)」によって起きている可能性があります。
歯ぐきが下がるというと歯周病を思い浮かべるかもしれませんが、原因はそれだけではありません。歯みがきの力が強すぎる場合や、歯並び・噛み合わせなどが影響するケースもあります。日本歯周病学会でも、歯周病の進行や誤った歯みがき、噛み合わせなどが原因として挙げられています(*1)。
ここでは、歯ぐきが下がる主な原因と、自分でできる対策、歯科医院で行われる治療について紹介します。
*1: https://www.perio.jp/qa/symptom/
歯茎はなぜ下がる?考えられる主な原因
歯ぐきが下がる原因のひとつが「歯周病」です。
歯周病は、歯ぐきだけに起こる病気ではありません。進行すると、歯を支えている「歯槽骨」という骨にも炎症が広がり、骨が少しずつ失われていきます。それに伴って歯ぐきの位置が下がり、これまで隠れていた歯の根元が見えるようになることがあります。
一方、歯周病ではなく、歯みがきの仕方が原因になることもあります。
汚れをきれいに落とそうとして、歯ブラシを強く押し当ててゴシゴシ磨いていると、同じ部分の歯ぐきに繰り返し刺激が加わります。力を入れて磨くほどきれいになるわけではないため、歯ぐきが下がっている人はブラッシングの力加減も見直したいところです。
このほか、歯の位置や噛み合わせなどが関係する場合もあります。加齢に伴って歯ぐきが変化することもあり、矯正治療による歯の移動に伴って歯肉退縮がみられるケースもあります。 原因によって必要な対応は変わります。「歯ぐきが下がったから歯周病だ」と決めつけず、まず何が起きているのかを確認することが対策の第一歩です。
歯茎が下がるのを抑えるためにできること
歯ぐきの退縮が気になったら、最初に見直したいのが毎日の歯みがきです。
ポイントは、強くこするのではなく、歯と歯ぐきの境目に付着したプラークを丁寧に落とすこと。歯ブラシを必要以上に押しつけず、自分の歯並びに合わせて少しずつ動かします。
ただし、「これ以上歯ぐきを下げたくないから」と歯みがきを控えるのもよくありません。プラークが残れば歯ぐきに炎症が起こり、歯周病が進む原因になります。歯ブラシだけでは清掃しにくい歯と歯の間には、デンタルフロスや歯間ブラシを使う方法もあります。どの道具が合うかわからない場合は、歯科医院で磨き方を確認してもらうとよいでしょう。
また、歯ぐきが下がって歯根が露出すると、冷たいものなどの刺激が伝わりやすくなり、知覚過敏が起こることがあります。露出した歯根部分はむし歯にも注意が必要です。
見た目の変化だけで終わるとは限らないため、退縮に気づいたら、歯周病やむし歯がないかもあわせて確認しておきましょう。
下がった歯茎は戻る?歯科医院で行う治療
「歯ぐきをマッサージすれば、また元の位置まで戻るのでは?」と思う人もいるかもしれません。
しかし、すでに歯の根元が露出するほど歯肉退縮が起きている場合、セルフケアだけで歯ぐきを元の状態に戻せるとは限りません。
歯科医院では、まず歯ぐきが下がった原因を確認します。
歯周病が原因であれば、歯に付着したプラークや歯石を取り除き、炎症を抑える治療を進めます。ブラッシングが原因と考えられる場合には磨き方を修正し、噛み合わせや歯並びが影響している場合は、それぞれの状態に応じて対応を検討します。
歯肉退縮の程度や口の中の状態によっては、「歯周形成外科」と呼ばれる治療が選択肢になることもあります。たとえば、口の中から採取した組織を移植し、露出した歯根を覆う「結合組織移植術」などです。
ただし、こうした治療ですべての歯肉退縮を完全に元の状態へ戻せるわけではありません。歯ぐきだけでなく、歯を支える骨や周囲の組織の状態によっても治療できる範囲は変わります。まず原因を診断したうえで、その人に合った方法を選ぶ必要があります。
さいごに
歯ぐきが下がる「歯肉退縮」は、歯周病だけでなく、強すぎる歯みがきや歯並び、噛み合わせ、加齢など、さまざまな理由で起こります。
そのため、「年齢のせいだから仕方がない」と考えたり、反対に「もっとしっかり磨かなければ」と力を入れて磨いたりするだけでは、適切な対策にならないことがあります。
以前より歯が長く見える、歯の根元がしみる、歯と歯の間のすき間が目立ってきた――。そんな変化に気づいたら、まず歯科医院で原因を確認してもらいましょう。
すでに下がった歯ぐきをセルフケアだけで元通りにすることは難しい場合がありますが、原因に合ったケアや治療を行うことで、それ以上の進行を抑えられる可能性があります。毎日の歯みがきと定期的なチェックを続け、歯だけでなく、それを支える歯ぐきの状態にも目を向けていきましょう。