日本は現在、超高齢社会を迎えており、歯科医院に通院困難な要介護高齢者が増えてきているのが現状です。
高齢者の方にとって、お口の健康を維持することは、さまざまな病気の予防にもつながります。
訪問歯科診療は、歯科医院まで通院ができない方のための歯科往診サービスです。
今回は、訪問歯科診療について詳しくご紹介します。
歯医者に行かなくても診てもらえる、訪問歯科診療とは?
訪問歯科診療とは、高齢や病気などが原因で自力での通院が難しい場合に、歯科医師や歯科衛生士が自宅、施設、病院などに訪問して、歯科治療や口腔ケアなどを行う制度です。
歯科医院で治療に使用されるものと同じような、持ち運びができるポータブルの機材をもって診療に行くので、患者さんのお身体の具合やお口の状態に合わせて適切なサービスが受けられます。
直接自宅や施設などに歯科医師や歯科衛生士が来てくれるので、移動にかかる負担がなく、慣れた場所でリラックスして治療に臨むことができます。
訪問歯科診療を受けるために必要な準備・設備は?
「訪問歯科診療を受けるときに何か準備しておくものはありますか?」と聞かれることがありますが、必要なものは全て用意していきますので、患者さんが準備するものはありません。
しかし、患者さんが普段使っているお気に入りのタオルやコップなどがある場合は、ご本人がいつも使っているものを使用したほうがリラックスできるかもしれませんので、そちらを使っていただくこともあります。
特別に準備していただく設備はありませんが、歯科医師や歯科衛生士が診療を行うために動けるスペースがあれば大丈夫です。
また、訪問歯科診療は多職種の方と連携して診療を行いますので、かかりつけの病院の先生や飲んでいるお薬の情報などを教えていただくことがあります。
訪問歯科診療ってどんなことをしてもらえるの?
訪問歯科診療で受けられる治療
むし歯
むし歯は、原因となる細菌が出す「酸」によって歯が溶かされて、歯に穴があく病気です。
高齢者の方は、歯ぐきが痩せて歯の根元が露出したり、唾液の分泌が低下したりすることで、むし歯になりやすくなります。
歯周病
歯周病は、原因となる細菌によって歯ぐきに炎症が起こり、進行すると歯を支えている顎の骨までも溶かしてしまう病気です。
歯周病で顎の骨が溶けてしまうと、歯を支えることができなくなり、いずれ抜け落ちてしまいます。
歯周病はお口の中だけでなく、糖尿病などの全身疾患とも関係が深いので、早めに治療しましょう。
入れ歯の作製や調整
美味しく食事が食べれるということは、生きる喜びにもつながります。
しかし、合わない入れ歯を使っていたり、歯がない状態が続いていたりするのは良くありません。
よく噛めるようになると、脳への刺激が増えて認知症の予防にもつながりますので、お口に合った入れ歯を使うことが大切です。
嚥下リハビリ
嚥下(えんげ)とは、飲み込む動作のことを指し、食べ物を認識してから胃に送るまでの一連の過程のことをいいます。
嚥下障害になり飲み込みが困難になると、栄養不足や場合によっては誤嚥や窒息を招く恐れがあるため早めの改善が必要です。
嚥下リハビリでは、口や喉などの嚥下に必要な器官のマッサージや筋肉を動かす体操を行い、飲み込む機能を高めます。
口腔ケア
口腔ケアには、お口の中を清潔に保ち、機能の維持・回復を測る目的があります。
むし歯や歯周病の予防だけでなく、誤嚥性肺炎の予防などにもつながります。
いつまでも、ご自分の歯で美味しく食事を食べていただくために、在宅歯科医療では「歯科診療」「口腔ケア」「リハビリテーション」の3つの分野が同時に必要となります。
さいごに
今後、少子高齢化で高齢者の割合が増加していく日本社会では、訪問歯科診療の重要度がますます高まります。
同居されているご家族の通院が困難な方はもちろんですが、とくに問題がない方でも、近くに訪問歯科診療を行っている歯科医院があるかどうか、あらかじめ調べてみてみるのも良いかもしれませんね。