フッ素ってなに?
フッ素は虫歯予防に使用するおくすりといったイメージが強いかもしれませんが、本来自然界にも多く存在している元素の一つです。飲食物では、緑茶やりんご、イワシやみそなどにも含まれており、実は私たちにとってはとても身近な成分でもあるのです。今回ご紹介するのは、主に虫歯予防に使用するフッ素であり、正しくは「フッ化物」といいます。では、普段自宅で使っているフッ素と、歯医者で使われているフッ素には、どのような違いがあるのでしょうか?
ご自宅で使うフッ素
ご自宅で使う歯磨き粉などのフッ素用品には、安全かつ効果的に使用するため、濃度の制限が設けられています。数値でいうと「100~1,500ppm」の濃度であり、数値が高くなればなるほどフッ素の濃度も高くなります。このような濃度の差があるのは、年齢によって、使用推奨量と推奨濃度が異なるためです。特に5歳くらいまでは体が小さく、うがいも不完全であるため、500ppmまでの低濃度のものが推奨されています。
歯医者で使うフッ素
歯医者で使用するフッ素は、毎日ではなく期間を空けて用いること、医療従事者の管理下のもと使用することを前提に、「9,000ppm」と高濃度のものを使用します。フッ素の効果としては低濃度のものと変わりませんが、2つを併用することで虫歯予防の効果が大きく高まります。自宅用である低濃度のフッ素で内側から強く、高濃度のもので外側から強くする、といったイメージです。歯科医院では家庭用よりも高濃度のフッ素を使用しますが、歯科医師及び歯科衛生士の国家資格をもつ医療従事者が扱うため、安全性は確立されています。
フッ素を塗布するメリット
フッ素は虫歯予防になるということは広く知られていますが、具体的にはどのような働きがあるのかをご存じでしょうか?フッ素には、大きく分けて以下の3つのメリットが存在します。
歯質の強化
歯は本来「ハイドロキシアパタイト」という結晶の構造でできていますが、この結晶には虫歯菌の出す酸に弱いという欠点があります。このハイドロキシアパタイトにフッ素が作用すると、「フルオロアパタイト」という結晶構造に変化します。こうしてできたフルオロキシアパタイトは、虫歯菌の出す酸に強く、歯が溶けにくくなるといった特性があります。フッ素による歯の強化は、このような仕組みで成り立っているのです。
歯の再石灰化を促進
歯は飲食をするたびに、歯が溶ける「脱灰(だっかい)」と、脱灰によって溶け出したカルシウムを元に戻す「再石灰化(さいせっかいか)」を繰り返しています。フッ素は、後者の再石灰化を促進させるチカラがあり、歯を修復する作用を後押しする効果があります。
細菌の活動抑制
虫歯菌は歯垢(プラーク)の中に存在し、日々糖分を取り込んで歯を溶かす酸を出しています。フッ素には、この虫歯菌の活動を抑え、さらに弱らせる働きがあります。このように虫歯菌の活動を抑制しながら弱らせる効果のあるフッ素は、虫歯の予防には欠かせないものなのです。
フッ素塗布を始める適切な時期・費用・効果
フッ素は歯が生えたら始めることができます
フッ素は歯が生えていない新生児には必要ありませんが、乳歯が生え始めたらもう使い始めてよいとしています。ただし、量と濃度には注意が必要です(例:6ヶ月〜2歳→500ppmのものを歯ブラシに切った爪程度の量)。特に生えたばかりの歯はフッ素を取り込みやすいため、容量と濃度を守りつつ、積極的な使用が望ましいでしょう。
フッ素は保険適用です
小児におけるフッ素の塗布は、基本的には保険が適用されます。しかし、クリニックによっては自費であったり、市町村の取り組みで無料としていたりする場合もあります。また、保険適用の場合には、保険のルールにより3ヶ月に1回のフッ素と決められています。しかし、「か強診」と呼ばれる厚生労働省が出す施設基準を全てクリアして認定された歯科医院では、毎月保険適用でフッ素をすることができるため、虫歯のリスクが高いお子様には向いているでしょう。
持続的な使用で効果が発揮されます
フッ素は、一度使用したら効果が永久的に持続するわけではありません。歯に作用したフッ素は一定期間蓄積されますが、代謝によって次第に少なくなります。そのため、毎日低濃度のフッ素を補給しつつ、高濃度のフッ素を定期的に塗布するのが望ましいとされています。ただ、フッ素を使用しているからといって、虫歯にならないということではありません。正しい歯磨きと食習慣があってこそ、フッ素は効果を最大限に発揮してくれます。フッ素を魔法のおくすりと過信せず、あくまでも補助的なものだとお考えください。
さいごに
以上のことから、
・自宅用と歯科医院のフッ素は、併用することでより虫歯予防効果が向上する
・フッ素は歯が生えたら使用できるが、量と濃度に注意が必要である
・歯が生えた直後はフッ素を取り込みやすい
・フッ素は代謝により減少するため、補給が必要
ということがわかりましたね。
稀にフッ素の安全性を疑問視する声を挙げる方もいらっしゃいますが、多くは情報が古く、恐怖心を煽る言葉ばかりで、エビデンスがほとんどありません。
確かにフッ素には、過剰摂取した場合に起こる副作用がありますが、これは体にいいとされる食品や漢方などでも同じことが言えますよね。どんなに体に良くても、推奨量を遥かに超えればそれは毒にもなり得ます。
お子様へのフッ素は、容量と濃度を正しく守って使用することで、高い虫歯予防効果が期待できます。お子様の歯を虫歯から守るためにも、歯が生えはじめたら歯科医院に早めにご相談ください。