「寝ている間に歯ぎしりをしているよ」と家族から言われたことはありませんか。朝起きたときに顎がだるい、疲れていると感じる人もいるかもしれません。
歯ぎしりは、本人が気づきにくい習慣のひとつです。とくに睡眠中は無意識に起こるため、自覚がないまま続いていることもあります。歯科医院で歯のすり減りを指摘され、そこで初めて気づくケースもあります。
一般に「歯ぎしり」というと、上下の歯をギリギリとこすり合わせる動きを指します。一方、「食いしばり」は上下の歯を強く噛みしめる動きです。歯科では、こうした動きをまとめて「ブラキシズム」と呼ぶことがあります。
今回は、その中でも睡眠中に起こる歯ぎしりに焦点を当て、歯や顎にどのような影響があるのか、どんな対策があるのかを紹介します。
寝ている間の歯ぎしりで、歯はどうなる?
睡眠中に歯ぎしりをしていると、上下の歯が繰り返し強く接触します。その影響としてまず現れやすいのが、歯のすり減りです。
歯の表面を覆っているエナメル質が少しずつ摩耗すると、歯の先端や噛む面が平らになっていくことがあります。さらに強い負担が続けば、歯が欠けたり、ひびが入ったりするほか、詰め物や被せ物が壊れることもあります。
日本歯科医師会でも、歯の異常な摩耗や、起床時の顎の疲れ・痛みなどを、睡眠時ブラキシズムを疑う手がかりとして挙げています(*1)。
歯のすり減りは、知覚過敏につながることもあります。表面のエナメル質が薄くなると、その内側にある象牙質へ刺激が伝わりやすくなり、冷たい飲み物などがしみるようになる場合があります。
ただし、歯がすり減っているからといって、現在も歯ぎしりが続いているとは限りません。以前の歯ぎしりによる摩耗が残っているケースもあるため、歯の状態だけで判断するのは難しいところです。気になる場合は、歯科医院で歯の摩耗や症状をあわせて確認してもらいましょう。
*1:https://www.jda.or.jp/park/trouble/bruxism02.html
歯だけでなく、顎にも負担がかかる?
歯ぎしりの影響は、歯だけに現れるわけではありません。
強い力が繰り返しかかると、歯を支えている組織のほか、顎を動かす筋肉や顎関節にも負担がかかります。
たとえば、「朝起きると顎がだるい」「頬のあたりが疲れている」と感じる場合、眠っている間に顎の筋肉を使い続けている可能性があります。
顎関節症との関連がみられることもあります。顎関節症では、顎が痛む、口を開けにくい、口を動かしたときに音がするといった症状が現れます。睡眠中の歯ぎしりは、こうした症状に関係する要因のひとつと考えられています。
もっとも、歯ぎしりをする人が必ず顎関節症になるわけではありません。顎関節症にはさまざまな要因が関係しているため、歯ぎしりだけを原因と決めつけることはできません。
自分では寝ている間の様子を確認しにくいので、家族から歯ぎしりを指摘された場合や、朝の顎の疲れ、歯の欠け・すり減りが気になる場合は、一度歯科医院で相談してみるとよいでしょう。
歯ぎしりから歯を守るには?ナイトガードも選択肢
睡眠中の歯ぎしりは、起きているときの癖のように「やめよう」と意識して止めるのが難しいものです。
そこで、歯を守るための方法として使われるのが「ナイトガード」と呼ばれるマウスピースです。
ナイトガードは主に就寝中に装着し、上下の歯が直接強くこすれ合うのを防ぎます。歯の摩耗を抑えたり、詰め物や被せ物を歯ぎしりによる負担から守ったりする目的で使われます。顎関節への負担を軽くできる可能性もあります。
ただし、ナイトガードを使えば歯ぎしりそのものがなくなる、というわけではありません。睡眠時の歯ぎしりには複数の要因が関係しており、すべての人に共通して有効な「歯ぎしりを止める方法」が確立されているわけではないためです。
ナイトガードは、歯ぎしりを止める装置というよりも、歯ぎしりによって歯にかかるダメージを減らすためのものと考えるとわかりやすいでしょう。
また、ストレスや飲酒、喫煙、服薬、睡眠に関する問題などが睡眠時ブラキシズムと関連する場合もあります。生活リズムを見直したり、寝る前にゆっくり過ごせる時間をつくったりすることも、睡眠環境を見直すきっかけになります。
市販のマウスピースもありますが、歯並びや噛み合わせは人によって異なります。装着して痛みや強い違和感があるものを、そのまま使い続けるのは避けましょう。歯ぎしりによる症状が気になる場合は、歯科医師に相談したうえで、自分の口に合った方法を検討してください。
さいごに
睡眠中の歯ぎしりは、自分では気づかないまま続いていることがあります。
歯のすり減りや欠け、知覚過敏、朝起きたときの顎の疲れなどは、歯ぎしりに気づくきっかけになる症状です。
とくに歯の摩耗は、歯ぎしりをやめれば自然に元の形へ戻るものではありません。症状が強くなってから対処するよりも、負担がかかっていることに早めに気づき、歯を守る方法を考えることが大切です。
家族から歯ぎしりを指摘された、朝になると顎が疲れている、最近歯がしみる、歯が欠けることが増えたといった変化があれば、一度歯科医院で相談してみましょう。必要に応じてナイトガードなどを取り入れながら、睡眠中に歯へかかる負担を減らしていきましょう。